馬場亨法律事務所


馬場亨法律事務所|法律メモ

法律メモ


目次

  1. 民事上の名誉毀損
  2. 父母・配偶者・子の慰謝料請求権
  3. メインバンクの情報提供・説明義務
  4. 実力行使による権利実現(自力救済)の禁止
  5. 利息制限法の利率と継続的借り入れの場合の利率
  6. 欠陥住宅の建替費用と居住利益等の損益相殺
  7. 自動車の経済的全損
  8. 医師法による診断書交付義務
  9. 継続賃料(地代)の不動産鑑定
  10. 破産債権の行使と破産手続開始後の保証人の弁済
  11. 低髄液圧症候群(治療法・ブラッドパッチ)
  12. 退職労働者の競業避止義務
  13. 重利(複利)
  14. 交通事故による将来の逸失利益と中間利息控除
  15. 弁済・保証・担保「供託」、供託所
  16. 永代供養の法律的性格
  17. 詐欺・脅迫による取消
  18. 遺言・公正証書遺言
  19. 宅建業者の仲介手数料(報酬)
  20. 不動産取引と登記
  21. 債権譲渡の自由と制限
  22. 残業手当(時間外労働割増賃金)制度の改正
  23. 離婚と慰謝料・財産分与・親権者・養育費・年金記録分割
  24. 法律相談・法律顧問
  25. 物をただで使用させる契約と返還時期
  26. 弁護士の頼み方、やめ方
  27. 売買と解約手付
  28. 期間雇用労働者の雇い止め
  29. 養子縁組の無効について
  30. 土地建物(不動産)の贈与
  31. 取締役の会社に対する義務
  32. 契約の解除・解約
  33. 医師法の定める医者の業務・義務
  34. 死亡退職金は遺産分割の対象財産か
  35. 遺留分減殺請求権と時効
  36. 破産と免責不許可事由
  37. 離婚に伴う財産分与の基準時
  38. 交通事故・お墓の破損
  39. 意思解釈
  40. 個別労働契約と就業規則
  41. 一人取締役の死亡と相続放棄
  42. 有責配偶者からの離婚請求
  43. 無職者の休業損害・逸失利益
  44. 賃金未払・時効、付加金
  45. 交通事故の損害(通院交通費・代替労務費)
  46. 地代減額請求
  47. 欠陥住宅と業者の責任・時効
  48. 過払金請求か損害賠償請求か
  49. 消費者自己破産
  50. 解雇権の濫用

民事上の名誉毀損


[2010.11.13 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは民事上の名誉毀損についてです。

「名誉毀損」とは、人の「社会的評価」を低下させることである。社会的評価を低下させることであるから、世の中の不特定多数の人が知りうる状態で、人の名誉を傷つけるのでなければ「名誉毀損」にはならない。

よく、口論となって、相手に向かって「お前は、〇〇だ。」と侮辱的な言い方をすると「名誉毀損だ。」と反発する人があるが、これは、名誉毀損ではない。

ただし、相手の名誉感情を傷つけて精神的苦痛を与えれば慰謝料請求の対象となる。しかし、その人が「侮辱だ。」と感じれば、即、慰謝料の対象となると言うわけだはなく、慰謝料を支払わせるに相応しい強度が必要になる。やたらに裁判に訴えても認められない。

ところで、人の社会的評価を低下させたとしても、その行為が「公共の利害に関することで、その目的がもっぱら公益を図ることを目的とした場合は、指摘された事実が真実であることの証明があったとき」は違法性を欠き、慰謝料請求の対象とはならない。

では、真実であることの証明ができなかった時はどうだろうか。

ある人の犯罪が真実だと信じて報道したときはどうであろうか。捜査機関の発表を信じたのであれば、原則的には大丈夫だろうが、かならずしも真実とは限らないのだから、十分な取材が元になっていなければ、場合によっては、やはり過失を問われるであろう。

以上は、民事上の不法行為となる場合の名誉毀損や名誉感情の毀損行為を述べてきたが、刑法上の「名誉毀損罪」や「侮辱罪」は、より、厳格な要件を必要としている。国家が人を犯罪者として刑罰を課すという重大な人権侵害行為を正当化するのであるから、厳密な要件が要求されるのである。


父母・配偶者・子の慰謝料請求権


[2010.11.7 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは父母・配偶者・子の慰謝料請求権についてです。

加害者が被害者に対し故意または過失によって不法行為(例えば、交通事故、学校事故、医療過誤、喧嘩、窃盗・恐喝等の財産侵害、物の毀損等)によって損害を与えると、損害を賠償しなければならない(民法709条)。

損害が生命・身体に対するものであれ、物に対するものであれ、損害が発生すれば損害賠償をしなければならない。財産以外の損害(名誉や、精神的苦痛)に対しても損害賠償義務がある。慰謝料が代表的なものである(民法710条)。

人が交通事故などで、死亡すると、被害者本人に損害賠償請求権が発生し(民法709条)、相続人に相続される。

被害者が死亡した場合は、父母・配偶者・子にも慰謝料請求権が認められている(民法711条)。従って、相続人ではなくとも、これらのいずれかに当たる者は慰謝料を請求できる。父母・配偶者・子の固有の慰謝料請求権と言われている。

では、被害者が死亡したのではないが、重大な傷害を負った時には、父母・配偶者・子には慰謝料は認められないのだろうか。母親につき生命を害されたにも比肩すべき精神的苦痛を受けた場合は、被害者とは別に母親固有の慰謝料を認めるとした判例がある。重大な苦痛を条件として認める場合があるということになる。

では、被害者が死亡したが、相続人でもなく父母・配偶者・子でもない人、例えば、長年被害者と生活を共にして扶養されてきた身体障害者の妹には固有の慰謝料は認められないだろうか。民法711条の類推適用により認めた判例がある。

被害者本人でもなく、相続人でもないという場合に、不法行為によって、重大な影響を被る人が、加害者に固有の損害賠償ができないかどうかは、要は、条件は厳しいが709条に該当するかどうかの問題であるから、法律家に相談してみるべきであろう。


メインバンクの情報提供・説明義務


[2010.10.23 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマはメインバンクの情報提供・説明義務についてです。

A会社のメインバンクYは、A会社の取引先Xに対し、A会社の経営状態・財務状態について情報提供や説明義務を負うかという問題である。何の前提もなく、こんな義務が生ずるわけはないが、以下のような状況下ではどうか、という訳である。

判例時報2086号、65頁以下に紹介される判例は、概略以下のような事案である。

3月頃、A会社は経営不振に陥った。XはA会社と取引を継続すべきか否かを判断するにつき、AのメインバンクであるY銀行の発言に基づいて取引を継続した。ところが、A会社は持ち堪えられず、12月には民事再生手続きの申請をした。

3月の段階で、Y銀行はA会社を全面的に支援してゆく旨発言していた。また、銀行YのAの財務状況の認識などを述べていた。

これによって、A会社と取引を継続したXは、取引を継続したことによって回収不能となった債権額相当につき、Y銀行に対し、情報提供や説明義務に反したことが不法行為にあたるとしてY銀行に損害賠償を求めた。東京地裁平成22年5月25日判決はY銀行の責任を否定した。

取引先が破綻しそうだという情報があったときに、なお、取引を継続するかどうかの基礎資料を収集し、それに基づいて判断するのは、原則、あくまでも自己責任であるというわけだ。

情報源の情報が不正確であったからと言って、責任を、その情報源に転嫁するには、特別な事情がないとできない。経営者は常に厳しい判断力が要求されるわけである。


実力行使による権利実現(自力救済)の禁止


[2010.10.16 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは実力行使による権利実現(自力救済)の禁止についてです。

法治国家においては、私人が自分の実力行使で法的権利を実現することを禁じている。これを「自力救済の禁止」という。自力救済を認めると暴力を行使したり乱暴なやり方をする者が勝ちということになり、暴力の応酬や社会的な混乱を来すことになるので、法治国家においては禁じられる。

自分の権利が侵害されている状態を排除するには、裁判手続きをとって、裁判所の判断に従って、権利実現をしなければならない。

仮に法的権利があったとしても、実力行使を行うと違法となる。たとえば、友人から本を買った人が代金を先に払ったのに友人が買った本を渡してくれないという場合、この友人を殴って本を無理矢理渡させるとどうなるか。恐喝罪とか強盗罪とかに問われることになる。「金を払ったのに本を渡してよこさなかった相手が悪い。」と言っても、免罪してくれない。

かって、日本でも喧嘩両成敗という制度があった。これは、権力者が、その領域の支配下にある者達が、紛争解決のために私戦を行うと、いい方も悪い方も区別せず両方を成敗するもので、現在では「不合理」な解決方法の代名詞的に使われることもある。

しかし、これは、日本において支配者が支配下にある者達が私戦によって紛争を解決することを禁じて、裁判制度で解決することを勧めるためにとられた手段であった。このような形で日本でも法治思想が表現されていたのである。

時として、法的に権利を実現する(最終的には裁判所の判断を仰ぐ)ことは、自分の思うような内容で権利が実現できなかったり、時間を要したりして、歯がゆい思いをすることも多い。

しかし、自力救済に走ることを認めると、社会の治安が乱れることになり、暴力の強い者が主張する権利だけが実現されることになる。実は公平な権利の実現も何もないことになるのである。


利息制限法の利率と継続的借り入れの場合の利率


[2010.10.09 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは利息制限法の利率と継続的借り入れの場合の利率についてです。

利息制限法1条によれば利率の上限は次のように決められている。

元本が10万円未満は年2割、10万円以上100万円未満は年1割8分、100万円以上は年1割5分、である。この利率を超えた利率を約定しても無効である。

以前は任意に払った利息制限法超過利息は有効とされていたが、判例は厳格に解してほとんど任意の弁済だという貸し主側の抗弁は認めなかった。それで、最近の改正法で任意であろうがなかろうが利息制限法を超えた利息の受領は認めなくなった。

利息制限法を超える利息を受け取ると、超過部分は貸し主の不当利得となる。これの返還を受けることができるわけだが、利息制限法で計算して元本が残っているときは、超過した利息の分を元本に充当して元本の一部を返還した処理ができる。

このようにして、ついには、支払超過利息を元本に充当して元本がなくなり、無効な利息だけを払い続けていたことになる場合、この返還を請求できる。これが、いわゆる過払金返還請求である。

ところで、何度も借り入れをして借り入れが増減していた場合は利率はどうなるのだろうか。

はじめ、5万円を借りたが、また借りて、合計が15万円になった場合は利率はいくらだという問題である。貸主が銀行やサラ金などであって、「営業的金銭消費貸借」である場合は、合計額が元本になる。だから、はじめの利率は年2割だが、10万以上となったところで年1割8分となる。利息制限法5条1項でそのように定めている。一度に二口の借り入れをした場合も合計額が元本となる(同法同条2項)。

では、何度か借り入れをして元本の合計額が100万円以上となっていたが、利息制限法を超える利息を支払っていたために、利息制限法で再計算したら、段々に元本が減っていったという場合、100万円未満となったところで利率は年1割8分になり、10万円を割ったところで年2割になるのだろうか。

この場合は、合計が最高額だった時点での利率のままで計算するというのが最高裁の判決である。従って、上の例だと、1割5分のままで最後まで計算することになる(H22.4.20最高裁第3小法廷、判例時報2084号、p6)。


欠陥住宅の建替費用と居住利益等の損益相殺


[2010.10.02 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは欠陥住宅の建替費用と居住利益等の損益相殺についてです。

新築建物を買ったが、欠陥住宅で構造耐力上の安全性に関わる重大な瑕疵が多数有り、建て替えざるを得ないようなケースで、買主が売主や売り主からの工事請負人等を不法行為であるとして建替費用相当額の損害賠償を請求した事件がある。

この事件では、買主は建物の引き渡しを受けて居住を始めていたが、建物の構造に欠陥があって建て替えざるを得ないものであった。建替費用相当額が損害賠償額として認められるとして、売主は、買主の居住利益等を損益相殺(損害額から差し引くこと)ができるだろうか、というのが問題である。

控除を認める考え方はいくつかある。使用利益控除説(例えば賠償を受けるまでの居住期間の賃料相当額等がこれにあたると考えられる。)や経年減価控除説(賠償を受けて建て替えると、本来欠陥のない建物の引き渡しを受けたのであれば耐用年数が尽きている時期が来ても、なお使用できる期間が生ずることになるから、その分は、経年減価として控除するべきと考える説。)がある。

最近紹介された最高裁判決(平成22.6.17第1小法廷)のケースでは、損益相殺を認めなかった。しかし、多数意見では理由が明らかでない。

宮川光治裁判官の補足意見では、「買い主は、経済的理由等から安全性を欠いた建物であっても、やむなく居住し続ける。これを利益と考え、あるいは賠償金により建て替えると耐用年数が伸張した新築建物を取得することになるとして、これを利益と考えて損益相殺すると、賠償が遅れれば遅れるほど賠償額は少なくなる。これは、誠意のない売り主等を利する事態を招き公平でない。重大な欠陥があり危険を伴う建物に居住することを法的利益と考えること及び建物には交換価値がないのに建て替えれば耐用年数が伸張するなどと考えることは、いずれも相当でない。」との趣旨を述べている(判例時報2082号、p55)。

補足意見の理由付けは同意できる。


自動車の経済的全損


[2010.09.19 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは自動車の経済的全損についてです。

交通事故で自動車が破損した場合の損害の査定でよく問題になるのが、修理費の方が時価より高くなってしまう場合の損害額は、修理費か自動車の時価かである。

修理して使おうと思えば、そのまま、さらに何年か使えるという場合、新車を買おうと思えば、修理費以上の支出が必要となるわけだから、被害者としては、事故にさえあわなければ、買い換える必要はなく使用継続することができたのであって、修理費を損害として認めてもらいたいというのは人情としてわかる気はする。

しかし、判例や保険実務では、このような場合、原則として、「被害車両が修理不能もしくは修理費が時価額を上回るいわゆる全損状態(経済的全損)となった場合は事故直前の交換価値をもとに賠償額を算定し、そうでない場合は修理相当額をもとに損害算定する。」(交通事故損害額算定基準−実務運用と解説−22訂版 財団法人日弁連交通事故相談センター p225)として処理されている。

但し、経済的全損状態でも、特段の事情があれば、修理費を損害であると認めてくれることがある。しかし、これは全く例外と考えるべきで、要件をクリアすることは至難と思われる。

中古車両に関し、「当該車両の修理費相当額が破損前の当該車両と同種同等の車両を取得するのに必要な代金額の基準となる客観的交換価格を著しく超えるいわゆる全損にあたるときは、特段の事情のない限り、右交換価格からスクラップ代金を控除した残額が当該車両の車両損害というべきである。また、右特段の事情については、不法行為に対する損害賠償における公平の理念に照らし、被害車両と同種同等の自動車を中古車市場において取得することが至難である、あるいは、被害車両の所有者が、被害車両の代物を取得するに足る価格相当額を超える高額の修理費を投じても被害車両を修理し、これを引き続き使用したいと希望することを社会通念上是認するに足りる相当の事由が存するなどが典型的なものとして考えられる(東京高裁s57.6.17判決<判例時報1051号p95)(神戸地裁h8.5.24判決<交民集29巻3号p771>)」とした判決がある。

この神戸地裁の例では、修理費が認められているが、車種はシボレー・カムロ、被害者は自動車に強い愛着を抱き、古い車を長く乗り継いでいること、その他の所有自動車も古くこれを使用し続けていること、本件車両につき過去にも高額の修理費を実際に払って修理して使っている車両であること等を認定して、特段の事情ありとしている。この判例のハードルは相当に高く、通常見られる程度を越えた程度のこだわりでは経済的全損状態の車両の修理費は損害としては認められないと考えられる。


医師法による診断書交付義務


[2010.09.12 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは医師法による診断書交付義務についてです。

医師法19条2項によれば、「診察・・・(中略)・・・(した)医師は、診断書・・(中略)・・交付の求めがあった場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。」と規定されている。患者には自らの医療情報にアクセスする権利があるのであるから、その面からも根拠づけられる規定である。

ところで、患者から、診断書の中に記載されることを求められた事項のうちに、現在の症状が当該医師の前にその患者の治療に当たっていた医師の医療行為の過誤を原因とすることの記載を求められた場合でも、医師はこの診断書を交付しなければならないだろうか。

このような内容を含む診断書の要求は前医師の医療過誤についての鑑定を求めるに等しく、本来の診断書の内容を超えるものと考えられるとされている。従って、このような診断書の交付を拒絶しても正当事由があるものと認められる(医事判例百選・別冊ジュリスト183号、p38・・歯科医医師法に関する事例)。

従って、診断書不交付が患者の権利を侵害したとして損害賠償を支払わなければならないということにはならない。


継続賃料(地代)の不動産鑑定


[2010.09.05 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは継続賃料(地代)の不動産鑑定 についてです。

継続賃料を求める鑑定評価の手法として次のような手法があるとされている。差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法である。

これらとは別の手法として平成12年頃からの東京高裁で次々とだされた判例がある。土地残余法とか収益分析法などと呼ばれている。それ以後、上記の他の新しい手法を提案されて、様々な呼称を付けられているので、内容を確認しないと同じ手法のことを言っているのかどうか、ちょっと、判別しずらいものもがある。

平成14年10月22日判決も、地上建物の賃料をもとに土地残余法などにより地代は算定されるべきとした判決である。この判決では、地代の増減額を土地価格にスライドさせる方法とか、固定資産税の増減にスライドさせる考えとかに疑問を呈し、かつ、「不動産鑑定評価基準」(現国土交通省)の鑑定手法である、差額分配法、利回り法、比準賃料、スライド法、いずれに対しても疑問を呈した。

これは、見方によっては、従前の不動産鑑定手法が根こそぎ否定されたとの評価も可能である。不動産鑑定の現場では、その後も、従前の手法が用いいらて採用されていると考えられる。しかし、具体的ケースでは、まさに、上記判決が指摘した難点が露骨に現れる場合がある。形式的に不動産鑑定の手法を鵜呑みにして採用するのではなく、具体的妥当性を持つ手法であるかどうかは、慎重に検討する必要がある。


破産債権の行使と破産手続開始後の保証人の弁済
[2010.08.25 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは破産債権の行使と破産手続開始後の保証人の弁済についてです。

債権者甲、債務者A、保証人B、債権額100万円という例で考える。

Aが破産宣告を受けた。そこで、甲がBに保証債務を請求したところ、50万円を支払った。この場合、甲はAの破産手続きでは、破産手続き開始の時に有していた破産債権100万円で破産債権の届け出をして権利行使できる(破産法104条2項)。

では、甲がAに対して有する債権が実は50万円と50万円の二口の債権であった場合で、破産手続き開始後、Bからこの内の一口の債権全部50万円の弁済を受けた場合でも、甲は二口の合計100万円を破産債権として届け出ることができるのだろうか。

これはできないというのが判例である。破産法104条2項は、同条5項で物上保証人の場合に準用されている。すなわち、Bが抵当権設定者であったり、質物提供者だったりした場合も同じ取り扱いがされる。この場合、二口合計100万円の内の一口50万円を物上保証人が支払ったという例について、最高裁の判決がある。

「債務者の破産手続開始の決定後に、物上保証人が複数の被担保債権のうちの一部の債権につきその全額を弁済した場合には、複数の被担保債権の全部が消滅していなくても、上記の弁済に係る当該債権については、同条(破産法104条)5項により準用される同条2項にいう「その債権全額が消滅した場合」に該当し、債権者は、破産手続きにおいてその権利を行使することができないものというべきである(最高裁小3H22.3.16)(判例時報2078・p13)」と判示した。

物上保証人に関する(破産法104条5項)判例であるが、破産法104条2項の解釈でもあるわけだから、保証人の場合も、複数口の債権の一部の債権について全額の弁済が保証人によってなされた場合は、債権者は、その債権については、届け出破産債権の総額からはずさなければならない。

保証人Bが一部の債権の全額を支払ったことによって、その債権に関する求償権を取得することになるから、その債権に関しては、保証人Bが求償債権を破産債権として届け出て、配当を受けることになるだろう。


低髄液圧症候群(治療法・ブラッドパッチ)
[2010.08.17 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは低髄液圧症候群(治療法・ブラッドパッチ)についてです。

最近、低髄液圧症候群という、病名をよく聞くようになった。交通事故による鞭打ちや、スポーツで外傷を受けたりすると、髄液が漏れて髄液圧が下がり、様々な症状が現れる。頭痛、吐き気、めまい等々である。

  

しかし、この病気であるかどうかの診断はなかなか難しい。診断基準はいくつかあるようだが、「国際頭痛学会における診断基準」「日本神経外傷学会の診断基準」「研究会ガイドライン作成委員会の診断基準」などがあるとされている。

診断方法としては、Gd造影脳MRI、RI脳糟・脊髄腔シンチグラム、MRミエログラフィー、CTミエログラフィーなどで髄液漏出像を見つけたり、髄液圧を測定したりする。

治療法としては、ブラッドパッチと言う方法で、硬膜外自家血を漏出部位の脊椎硬膜外腔に注入する方法がとられる。

ところで、交通事故の損害賠償の請求で、頭痛など神経症状あるが、検査などに証拠が現れず、はっきりしないという場合に、この病名を付けてしまっているのではないかとの批判もある。

最近、上記の「研究会ガイドラインの基準に依拠して画像所見が認められるとする診断を、検査方法が医学会から疑問を呈されていた「RI脳糟シンチグラム」であったことと、他の2基準があげる「起立性頭痛や体位による症状変化が認められない。」として、低髄液圧症候群であることを否定した判決が紹介された(判例時報2077、p68)。

 

退職労働者の競業避止義務
[2010.07.23 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは退職労働者の競業避止義務についてです。

会社を退職した者は、同業他者に再就職したり同じ事業を行ったりできるだろうか。職業選択の自由・営業の自由は憲法の認めるところであり、原則としては自由にできる。

しかし、会社の就業規則や会社との契約で、退職後の競業避止義務が決められている場合はどうだろうか。就業規則で決められている場合には、もちろん就業規則が労働者に対して周知措置がとられていることが前提である。

就業規則や特約が有効であるためには、競業避止義務の内容が合理的であること、特約による場合は労働者が自由意思によって同意していることが必要だとされている。

では、内容が合理的であると認められためには、どのような要件を満たす必要があるのだろうか。

避止義務の内容がどこの会社でも知り得たり、体得できる技術を対象としているのではなく、その会社の特殊知識であったり特殊技術でなければならないとされる。従って、その会社の特殊な知識や特殊な技術に接しうる地位にない人には、競業避止義務を負わせることはできない。

また、競業禁止の地域及び期間の限定(1年くらい、多くても3年くらいと考えられているようだ)、競業避止義務を課す代替措置(競業避止義務に対応した特別給与や退職金の措置)などが必要であるとされている。

これらの要件は全て整っていなければならないとか、すべてが一応整っていればいいということではなく、これらの総合的判断として「競業避止義務規定や特約の有効性」が認められるということである。労働者の競業行為が背信的要素を持っていれば競業避止義務違反として差し止めや損害賠償の対象とされる度合いが強くなるであろう。


重利(複利)
[2010.07.17 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは重利(複利)についてです。

延滞(遅滞)した利息を元本に組み入れて、利息が利息を生むことを重利(複利)という。

民法は利息の支払いが1年以上遅延した場合、債権者が催告したのに債務者がその利息を支払わないときは、債権者はこれを元本に組み入れることができるとしている(民法405条)。これを法定重利(法定複利)と言っている。

法定重利が認められている反対解釈として利息には遅延損害金は付かないと解釈されている。

では、元本の履行期後に発生する遅延損害金は民法405条を適用して元本に躯みれることができるのだろうか。すなわち、1年を経過した遅延利息は債権者が催告しても債務者が支払わないときは債権者は元本に躯みれることはできるのだろうか。判例は認めている。

ところで、民法は当事者が年数回の遅延利息の元本組み入れを約定すること(約定重利・約定複利)を禁じていない。しかし、重利の結果、本来の元本に対して支払った利息総額が利息制限法の定める年利を超えてしまうときには、利息制限法に違反し、その超えた部分は無効となる。すなわち、不当利得となり返還しなければならなくなるとされている。


交通事故による将来の逸失利益と中間利息控除
[2010.07.14 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは交通事故による将来の逸失利益と中間利息控除についてです。

交通事故によって死亡したり労働能力を一定割合失ったりする場合、将来得られたはずの収入が得られなくなる。これを将来の逸失利益という。逸失利益の計算は、毎月の又は毎年の収入に単純に将来の労働可能年数を掛けて算出するのではない。ホフマン係数とかライプニッツ係数を用いて中間利息を控除する。

本来、将来に得られるはずの収入に相当する損害額を、現在受け取ってしまうのだから、これを銀行などへ預けておけば、利息が付くはずで、利息が付いた結果、将来に本来の金額が受け取れると考えて、中間利息を控除してた結果出てくる金額を元本(現在得られる損害金額)とする考え方をとっている。判例も実務もこの考え方をとっている。

中間利息の控除の方法は2種類あり、上述のホフマン係数を用いる方法とライプニッツ係数を用いる方法である。ホフマン係数は単利計算であり、ライプニッツ係数は複利計算である。判例では、どちらかをとらねばならないとはされていない(最高裁平成22.1.26判決)。判例は民事法定利率(年5分)でいいとしている。今時、年5分というのは利率が高すぎないかという疑問はあるが、これでいいことになっている。

ただ、裁判実務ではライプニッツ係数を用いることが多くなっていると言っていいようだ。しかし、これにこだわることはないので、被害者として請求するときには有利な方法で計算し、後は交渉という考え方でいいのではないだろうか。


弁済・保証・担保「供託」、供託所
[2010.07.10 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは弁済・保証・担保「供託」、供託所についてです。

供託という制度がある。例えば、建物の賃借人が大家に賃料を支払おうとしたところが、大家は賃貸借は終了したので、賃料としては受けとれないと言ったとしよう、借家人は賃貸借は終了していないが大家が家賃を受け取らないのだからそのままにしておこう、という訳にはゆかない。仮に大家の主張が間違っていても、今度は、賃料支払いの不履行で、賃貸借を解除されると本当に出て行かなければならなくなる。このようば場合に家賃を支払ったと同じ効果を認めてくれるのが、「供託」の制度である。

民法494条に二つの場合が認められている。一つは債権者が受領を拒んだり、受領ができないときである。二つ目は債務者が過失なく債権者を確知できないとき、例えば、債権が二重に譲渡されて債務者のところに通知が届き、新債権者のうち、どちらの債権譲渡が有効かなどがわからないときなどである。このようなときには供託所に供託をすることになる(民法495条1項)。

この外、担保供託とか保証供託とか、裁判所の手続きやその他で供託ができる場合が法律で決められている。

ところで、供託所には法務局が当てられている。宮城県内であれば、仙台法務局、同名取出張所、大和出張所、同石巻支局、同塩竃支局、同古川支局、同気仙沼支局、同大河原支局、同築館支局、同登米支局がある。

供託所は現金や有価証券を扱う部署なので手続きが慎重である。問題が起こったときは、事前に供託所に相談して丁寧に準備しておくと、実地の手続きのときにスムーズにゆく。


永代供養の法律的性格
[2010.06.29 記]

甲がお寺と自己の死後の永代供養を依頼する契約をして死亡した。甲の死亡後に祭祀の主催者となった者は、甲が生前にしていった永代供養契約を解約できるかという問題がある。

お坊さんがする永代供養は法律行為ではないので、この依頼の法律行為は「準委任契約」である。準委任契約にも委任の規定が準用される。委任では、当事者が死亡すれば契約が終了することになっている。従って、委任者が死亡すれば委任契約は終了する。

しかし、永代供養契約は、委任者の死亡後の事務処理であるから、委任者の死亡によって契約が終了したり、任意の解約ができたのでは契約をした意味をなさない。

ときどき、争いになる。最高裁の判例に次のようなものがある。

(最判H4.9.22)・・委任契約は特段の合意がない限り委任者の死亡により終了する(民653・1)。委任者が受任者に対し、入院中の諸費用の病院への支払、自己の死後の葬式を含む法要の施行とその費用に支払い、入院中世話になった家政婦や友人に対する応分の謝礼の支払いを依頼するなど、委任者の死亡における事務処理を依頼する旨の委任契約においては、委任者の死亡によっても当然に同契約を終了さえない旨の合意を包含する趣旨と解される。

東京高裁H21.12.21判決は、この最高裁判決を援用しながら、「(永代供養契約について)自己の死亡後に契約に従って事務が履行されることを想定しているのだから、その契約内容が不明確又は実現困難であったり、委任者の地位を承継した者にとって履行負担が過重であるなど契約を履行させることが不合理と認められる特段に事情がない限り、委任者の地位の承継者が委任契約を解除して終了させることを許さない合意を包含する・・」とした。(判例時報2073号、32頁)


詐欺・脅迫による取消
[2010.06.12 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは詐欺・脅迫による取消についてです。

取引(売買などの契約)を行うときに、相手方が嘘を言ってだましたり、脅したりして、取引に応じさせたという場合がある。いわゆる詐欺や脅迫が行われたとき、その意思表示をした者は、一度、取引に応じてしまったら、その取引を有効として、債務履行の責任があるのだろうか。民法96条1項は、詐欺や脅迫にあってなした意思表示は取り消すことができるとしている。

但し、詐欺による取り消しの場合は、善意の第三者に対抗できないとされている(民法96条3項)。

詐欺や脅迫によって行われた意思表示であっても、本人が、その効力を認めようと思えば「追認」することができる。追認ができるのは、取り消し原因の状況がすんだ後である。だまされた状態や、おどかされた状態が続いているのに、見かけ上、追認があったような外形があったとしても、これは追認とはならない。

詐欺や脅迫で意思表示をしてしまった者が、追認ができる状態になった後には、この効果を認めるか認めないか自由になるので、この段階で取り消しや追認ができるのである。取り消されると、その行為ははじめから無効であったものとみなされる(民法121条)。

注意しなければならないのは、取り消し権は追認ができるときから5年間行使しないときは時効によって消滅する(民法126条)。時効消滅である。行為のときから20年を経過したときも取り消し権は消滅する(同)。いわゆる除斥期間である。

 

遺言・公正証書遺言
[2010.06.6 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは遺言・公正証書遺言についてです。

遺言の種類は民法に規定されているが、普通、自筆証書遺言と公正証書遺言が多い。自筆証書遺言は、遺言をする者が、遺言の全文、日付及び氏名を自署し、これに印を押さなければならないとされている(民法968条1項)。自筆証書遺言は相続が開始された後にその保管者が家庭裁判所に提出して検認を受けなければならない(民法1004条1項)。

しかし、公正証書遺言では検認は受けなくてもいいとされている(民法1004条2項)。自筆証書遺言は執行の手続きが面倒である。最近は公正証書遺言にしておく遺言者が増えているのはこのためである。その他、公正証書になっていると、不動産をある人に相続させる場合は、その趣旨を書き込んでおけば、その不動産の相続の指定を受けた相続人が公正証書の謄本だけで、他の相続人のハンコなしに登記ができる。しかし、預金は金融機関によっては簡単ではないので、遺言執行者を指定しておく方がいいようだ。

公正証書遺言を作成するときは、弁護士に相談した上で、遺言の内容を確定し、公証人に作成してもらうのがいいだろう。公証人は公証人役場という事務所を構えている。仙台では公証人役場は二箇所ある。

電話帳で公証人役場を調べ、事前に、公証人にアポを取って訪問して、必要書類や手順を相談すればいいだろう。もちろん、弁護士を頼んで、公証人との交渉も任せてしまうこともできる。

被相続人が死亡した後、鬱陶しいのは相続人間で遺産分割を行わなければならないことである。被相続人が、相続の仕方を遺言で決めておいれくれると長々と協議に時間を掛けなくて済む。ただし、遺留分に抵触しない遺言を書いておかないと結局紛争が起こる。


宅建業者の仲介手数料(報酬)
[2010.06.5 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは宅建業者の仲介手数料(報酬)についてです。

宅建業者が不動産(土地・建物)の売買を仲介するに当たり、目的不動産に瑕疵があったり、抵当権が設定されたりしているのに、これを知りながら故意に隠したり、または、仲介業者としてなすべき注意をすれば容易にわかることであるのにこれを怠って、買主に契約をさせたた。しかし、後日、物の瑕疵や権利の瑕疵が発覚して契約が解消された場合、それでも仲介業者は仲介手数料を請求できるか、あるいは、既に受け取ってた場合仲介手数料を返還しなければならないだろうか。

過去の判例に次のような例がある。売主側で説明をした者の虚偽の説明で買主が錯誤に陥っており、売主が将来紛争になることをおそれて契約を進めることに躊躇を示したにも、かかわらず、仲介業者は強引に契約を締結させた。案の定、買主は売主の詐欺を理由として売買契約を取り消した。そこで、双方は合意解除の形で売買契約を解消した。そこで、売主は宅建業者に支払った仲介手数料の返還を求めた。

東京地裁昭和51,10,14判決は要旨次のように述べて、仲介手数料(報酬金)の返還を命じた。

「契約締結の仲介を受けた仲介者が一旦契約を成立させたにもかかわらず、契約が無効であったり取り消された場合、契約締結の過程で無効あるいは取り消しの原因となる行為をしたり、あるいはこれに加担した仲介業者は仲介報酬金を取得し得ない。仲介報酬金は・・仲介の成功に対して支払われる対価であり、・・契約が契約締結過程における仲介者の行為により瑕疵あるものとしてその効力を生ぜず、あるいは取り消された場合には、右瑕疵につき責任のある仲介者は仲介に成功したとはいえない。」(判例時報856号、63頁)


不動産取引と登記
[2010.06.4 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは不動産取引と登記についてです。

土地や建物の不動産に関する取引がなされると、登記をする。登記をしないと、その取引によって取得した権利を第三者に対抗できないとされている(民法177条)。不動産取引において登記が「対抗要件」であると言われるゆえんである。    

例えば、甲が自分の土地建物をAに売却し(売買契約)、その後に、Bにも売却した・・つまり、二重に売却した(二重売買・二重譲渡)という場合、AはBに対し、「自分が先に買い受けたから、自分がその土地建物の所有者である。」と主張できるかという問題である。    

Bが先に甲から所有権移転登記を受けてしまうと、登記のないAはBに対し、自分が所有権者であるとは主張できないということになる。Aは甲との不動産の売買契約を解除して、支払ってあった売買代金を返還してもらう以外にない。    

このような関係は様々な形で現れる。例えば、Aが他人Bの土地を自分の土地として長く占有して取得時効期間を経過した。しかし、その後真の所有者であるBがこの土地をCに売却してBからCに登記を移転してしまった。この場合に、AはCに対して自分が時効で所有権を取得したとは主張できない。登記を得ていなかったからである。判例は、この場合、Aは占有開始時期を遅らせて、時効の完成をBからCが土地を買い受けた時期以降に遅らせて主張することは認めていない。    

不動産取引をする時には今の権利者が登記を得ているかどうかを確認し、そして権利を得た時には速やかに自分の権利の登記を得ておくことに十分に留意しなければならない。   


債権譲渡の自由と制限
[2010.05.29 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは債権譲渡の自由と制限についてです。

Aという人がBという人に一定の行為をすることを要求できる権利を債権という。売買契約で買主が売主に物を給付するように要求し、売主が売買代金を要求する権利は、それぞれ、対立関係にある債権である。たとえば、ここで、AがBに対する売買代金請求権をCに譲渡する行為を債権譲渡という。

民法は原則として債権譲渡の自由を認めている(民法466条1項)。しかし、その性質上譲渡ができない債権はもちろん譲渡できない。AがBに歌を歌ってもらう約束をしていて、この歌を歌ってもらう権利をCに譲渡することはできない。Bが歌を歌う条件が変更になってしまって給付内容に変更が生ずるからである。

また、債権者の権利行使方法に著しい差異が生ずるばあいも性質上譲渡できない。賃借人の権利(民法615条1項)や委任者の債権も性質上譲渡できないとされている。

ところで、民法では、性質上は譲渡が可能な債権でも、特約によって譲渡を禁止することができるとされている(民法466条2項)。しかし、この場合は善意の第三者には対抗できないとされている。なお、判例は、第三者の善意に重過失があった場合は対抗できると言っている。

債務者は、譲渡禁止の特約があったことと、債権を譲り受けた人(第三者)が、譲渡禁止の特約がなされていることにつき「知らなかった。」としても、重過失があったと抗弁して、債権の行使に応じないことができる。もちろん、裁判になれば証拠が必要である。

  

残業手当(時間外労働割増賃金)制度の改正
[2010.05.9 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは残業手当(時間外労働割増賃金)制度の改正についてです。

労働基準法の一部が改正され、この4月1日から施行された。時間外労働の長時間化に歯止めをかけようというものである。これまで時間外労働には法36条の協定を踏まえて、25パーセント以上の割増賃金の支払いが要求されていた。深夜労働に対しては50パーセント以上の割増賃金であった。

改正労働基準法37条1項但し書きでは、さらに、1ヶ月60時間を超える労働時間の部分については、50パーセント以上の割増賃金を支払わなければならなくなった。それから、これは努力目標とされているが、時間外労働が1ヶ月45時間を超え60時間までの部分については25パーセントを超えた割増賃金を支払うように努めることとされた。法36条2項に基づく「労働厚生省告示・労働自家の延長の限度に関する基準<154号・改訂>」に規定される。

但し、60時間を超える分部は中小企業には猶予措置が講じられている。また、この部分の割増上乗せ分については、場合によっては有給休暇での代替も可能という複雑な規定になっている。

労使双方とも十分に検討して、時間管理・賃金管理を行う必要がある。企業側も、これら労使関係の基本を厳密に管理してこそ放漫経営の感覚をチェックできる。

不況化、コンプライアンスは無視されて、サービス残業となっているかもしれない。細かい作業に成るが計算し直して見る必要がある。


離婚と慰謝料・財産分与・親権者・養育費・年金記録分割
[2010.05.6 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは離婚と慰謝料・財産分与・親権者・養育費・年金記録分割についてです。

離婚をしようと思う、または、配偶者から離婚を切り出された。さて、この場合離婚に伴って法律的に決めなければならないことはどんなことだろうか。ともかく別れて不和となってしまった夫婦の状態から脱したいという思いは募るものの、何をどうしたらいいのか頭の整理がつかないということはあるもの。

離婚をする際に取り決めなければならない重要な項目は次の通りである。まず、慰謝料。これは、結婚生活が破綻する原因を作った者に対し、相手方が請求するものである。妻から夫に請求するものと思っている人がいるが、これは誤りである。夫婦で作った財産(預金、不動産など)があればこれを分けるのは財産分与である。ときどき、妻が勝手に出ていたのだから財産は分けないなどという夫がいるが、これも誤りである。結婚してから夫婦がそれぞれの持ち場を分担して協力しできた財産は分けなければならない。

夫婦がそろっている時は未成年の子に対する親権は父母が共同で行使する。離婚する時は、父か母かどちらかに親権者を決めなければならない。子供が複数いる時も一人一人の子ついて親権者を決めなければならない。多くは、子を育てる親が親権者となることが多い。しかし、上の子は父が、下の子は母が引きとって親権者となることもあるし、親権は父だが、監護権は母だと言う決め方も例外的だが可能ではある。いずれにしても重要なのは、子の親権を誰にするかは、離婚原因をどちらが作ったかではなく子の福祉にとってどちらがいいかで決めることである。

実際には、母親が子の親権者になることが多い。子が未成年であれば養育費がかかるわけだから、夫が子が成人に達するまで、毎月、養育費を送る取り決めをする。もちろん、例外もある。

離婚する時は、老後に至って受けることのできる年金を公平にするために婚姻期間中の年金記録を分割する取り決めも必要である。離婚って、結構、エネルギーを必要とする。


法律相談・法律顧問
[2010.05.5 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは法律相談・法律顧問についてです。

社会生活や事業を行うと、様々な問題が発生します。これを解決するにはどんな方法があるのか迷います。隣人や親類とのトラブル、取引先とのトラブル。感情的な問題から道徳的問題、そして法律問題などです。弁護士の守備範囲は法律問題です。民事的な問題、刑事的な問題に分けられます。しかし、トラブルに巻き込まれた時、何の問題なのかがわからないこともあります。こんな、時は、ともかくまず弁護士に相談してみましょう。

自分の悩みがそもそも何の問題なのか。弁護士に事実をまず話し、法律問題なのかどうなのか整理してもらいましょう。自分では重大な問題に巻き込まれていると思っていたことが、実は、簡単な問題で余り悩む必要のないことであったり、自分は簡単に考えていたことが実は思い違いや認識違いであり、法律的には重大な問題であるということがあります。

法理相談は有料で、弁護士により多少の価格設定の違いはありますが、多くは、30分、5千円から1万円位ではなでしょうか。私の事務所は相談だけであれば5千円+消費税で行っています。別なところでも書きましたが、法律相談を受けたからと言って、その事件をその弁護士に委任しなければならないわけではありません。自分に合った弁護士を頼めばいいのです。

弁護士を頼めば費用が発生しますので、これは、ざっくばらんに聞いた方がいいでしょう。費用の計算は複雑なこともありますので、必要ならば資料を持ち込んで計算してもらいましょう。見積もりを見てからの依頼で十分です。

時々、法律相談が発生しそうで法律相談の必要が起きそうな場合や、何か問題が発生した時に「弁護士に相談してからお答えします。」という余裕を持つためには、法律顧問を持っておくことをお勧めします。法律顧問料は依頼者の事業規模にもよりますが、「毎月3万円(+消費税)以上」での範囲内での契約となります。個別の法律相談は毎月の相談回数に関係なく、この顧問料の中で賄われます。ただし、書面での法律鑑定は別料金となります。


物をただで使用させる契約と返還時期
[2010.05.4 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは物をただで使用させる契約と返還時期についてです。

ある人が特定の物、例えば土地や建物の不動産とか、自動車や機械などの動産をただ(無償)で、誰かに使用させるために、これを引き渡すこと、すなわち占有を移転する契約を使用貸借という(民法593条)。自分の所有物をただで貸すわけだから、親類とか友人とか特別な人間関係に基づく信頼関係によることが多い。法律もそのような前提で規定されている。

使用貸借の目的とされた物は何時返還しなければならないだろうか。返還時期を定めていればその時期が到来すれば返還しなければならない(民法597条1項)

返還時期の定めがない時はどうだろうか。返還の時期を定めていなかったときは、借り主は契約に定めた目的に従った使用及び収益を終わった時に返還しなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益を終わるのに足りる期間が経過した時は、貸主は直ちに返還を請求できる(民法597条2項)。賃借の家を借りられるまで一時的にただで家を貸してあげるという場合、数ヶ月を経過して、そのままだという場合は、通常の必要期間は経過しているわけだから、借主が家を借りていなかったとしても貸主は返還を請求できる。

当事者が返還の時期及び使用、収益の目的を定めなかったときは、貸主はいつでも返還を請求できる。Aが親名義の不動産に同居してが親が死亡し、Bがその不動産を相続したという場合には、Bから明け渡し返還を求められればAは、その不動産を原則として明け渡してBに返還しなければならない。相続では時々争いになる。


弁護士の頼み方、やめ方
[2010.04.29 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは弁護士の頼み方、やめ方についてです。

弁護士を依頼する法律関係は、委任(民法643条)または準委任(民法656条)と言われる関係です。委任は法律行為をすることを頼む行為であり、いわゆる代理権を与える行為です。準委任は法律行為を伴わない事務委託です。単なる書面作成などがこれに当たります。

弁護士が委託を受けると、いわゆる着手金を受け取って、仕事を始めます。着手金は弁護士が仕事に開始しすると、途中で、依頼者が、委任をやめても返還してもらえないのが原則です。従って、弁護士に依頼することは慎重でなければなりません。まず、法律相談を受けて相談料だけを支払い、法律相談の結果を踏まえて、委任するかどうかを慎重に検討してから依頼するべきでしょう。

弁護士の依頼は委任契約ですから、民法の委任に関する規定が適用されるのであり、民法651条1項には「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。」としています。ですから、弁護士と事件の処理方針が食い違って進行しないときには、もちろん、依頼者側から弁護士を解任することができます。ただ、弁護士と方針が一致しないと言っても、時々、依頼者が法律的には無理なことを要求していることがあります。このような時は、何度弁護士を変えて見ても本人の思うようにはゆきません。何度も無駄に着手金を払うことになります。注意しましょう。

しかし、法律的なことは、一度、弁護士に説明されても、なかなかわかりずらいこともあります。遠慮せずに、質問することが必要です。

弁護士の世界でもインフォームド・コンセントの考え方が取り入れられてから相当時間が経ってます。昔は弁護士に聞いたら怒られるんじゃないかと思った等という話を聞きました。しかし、自分が依頼者ですから、説明してもらうのは当然です。仕事に成果があれば弁護士に報酬を請求されます。事件につき説明を受けて納得したいところですね。


売買と解約手付
[2010.04.27 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは売買と解約手付についてです。

不動産の売買で、買主から売主に手付が支払われることがあります。民法の売買の節には手付に関する規定がおかれています。民法557条1項では「買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付金を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。」と定めています。

契約は一旦成立すると、一方が勝手に解除することはできません。契約は履行されなければならないのです。しかし、民法は手付けが打たれているときは、一方の当事者が履行に着手するまでは、債務不履行などがなくても、買主は手付を放棄し、売主は倍額を返還すれば契約を解除できるとしたものです。

民法によれば、「手付」は解約手付であると推定されることになりますが、売買代金に比較して手付けとして支払われた金額が著しく少ないときは、単なる、証約手付と解されることがないではないでしょう。契約書の中に趣旨が明瞭に書き込まれていれば問題ありませんが、これらが明記されていな場合には解釈の余地が残ります。

双方で見解の相違が生じたときは、弁護士に相談する必要があるでしょう。

なお、売買の手付の規定は、その性質に反しない限り、その他の有償契約に準用するとされています(民法559条)。


期間雇用労働者の雇い止め
[2010.04.25 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは期間雇用労働者の雇い止めについてです。

期間の定めがある労働契約はその期間が経過すれば契約は終了します。しかし、期間が経過しても、使用者側においてなお必要があり、契約を更新して、そのような事が何回か行われると、労働者側には今度も期間が経過しても契約を更新してくれるものとの期待を生じさせることとなります。

このような場合に、使用者側で契約の更新をしない場合、労働者から、雇い止めは解雇に当たり、解雇権濫用で解雇は無効だと主張されることがあります。このような場合、どのように判断されるのでしょうか。

裁判所は何回かの期間更新の事実があれば、それだけで、更新拒絶を権利濫用とは判断しません。次のような要素を総合考慮して判断するとされます。@当該労働者の担当業務が臨時性を有するものか常用性有するものか、A契約更新の回数、B雇用の通算期間、C契約期間・更新手続などの管理状況、D当該雇用における雇用継続の期待を持たせる言動・制度、E契約内容の合理性、などです。

厚生労働省では、「有期朗読契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」を定めています。これらをも参考にしながら、有期労働(雇用)契約の管理は慎重になされなければなりません。

会社(使用者)が、期間雇用者を採用しようとするときは、事前に法律的な問題をチェックしておく必要があります。顧問弁護士に相談してチェックを受けておきましょう。


養子縁組の無効について
[2010.04.21 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは養子縁組の無効についてです。

民法802条1号では、人違いその他の事由によって当事者間に縁組みをする意思がないときは、縁組みは無効とするとされています。最近の判例時報2067号の42頁以下で、関連の判例が紹介されました。大阪高裁の平成21年5月15日の判決です。

具体的事案の紹介は判例時報を見てください。ここでは、判旨の要点だけ紹介します。

上の判例は、「縁組みをうる意思」(縁組意思)とは真に社会通念上親子であると認められる関係の設定をする意思をいうものと解すべきであり、したがって例えば縁組みの届け出自体について当事者間の意思の合致があり、ひいては、一応法律上の親子という身分関係を設定する意思があったといえる場合であっても、それが、単に他の目的を達するための便法としても用いられた場合には、縁組み意思を欠いて縁組みは無効であるという趣旨を述べました。

「真に社会通年上親子であると認められる関係」って、どのような交流があれば、そういえるのでしょうか。

このケースでは、養親となった者と養子となった者の間には、ほとんど、交流がありませんでした。単に財産の相続関係を作出する目的だけで縁組み届けを出したと思われるケースです。しかし、上告されています。両当事者が届け出を出しているのですから、微妙な感じもします。


土地建物(不動産)の贈与
[2010.04.20 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは土地建物(不動産)の贈与についてです。

AはBに大変世話になったので、自分所有の一部の土地建物をただでBにやることにしました。Bは「好意に甘えます。」と言って、その土地建物をもらうことにしました。そして、契約書のような書面は特に作りませんでしたが、約束してから1年くらいしてから、Aがその土地建物をBに渡し、Bはそこに住み始めました。しかし、不動産の所有権移転登記もしないままでした。

それから、2〜3年後、些細なことからAとBは喧嘩をし、それ以来不和となりました。そこで、AはBにやった土地建物を返してもらうと言い出しました。Bは土地建物を返す必要はあるでしょうか。

民法550条には「書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。」と規定しています。土地建物をただでやるという約束は贈与契約にあたります。契約書のような書面は作らず、登記もしていないのですから書面によらない贈与ということになります。そこで、Aは贈与を撤回して取り返せそうですが、双ではありません。

民法550条ただし書は、「履行の終わった分部については、この限りでない。」として、撤回ができないこととしています。

判例も、引き渡しを終わった不動産の贈与は撤回できないとしています。また、判例は、引き渡しが終わっていなくても贈与の登記がされていれば撤回できないとしています。

なお、動産の場合は登記がありませんので、登記の有無は問題になりません。書面での約束がなくて引き渡しが終わっていなければ贈与者はいつでも撤回できます。この撤回権は時効にかかりません。


取締役の会社に対する義務
[2010.04.17 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは取締役の会社に対する義務についてです。

会社の取締役の地位は、会社に対して委任における受任者の関係にあります(会社法330条)。従って、取締役は会社に対して善管注意義務を負っています(民法644条)。会社法はこれを忠実義務という言葉で規定しています。「取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。」と規定しています(会社法355条)。

会社法は、特に取締役の忠実義務に反する行為として、取締役の競業や自己取引については制限規定をおいています。取締役が会社の事業に部類に属する取引をしたり、取締役が直接に会社と取引したり、会社が取締役の債務を保証する等の場合には、株主総会で承認を得なければならないとしています(会社法356条1項)。取締役会設置会社では取締役会の承認が必要です(会社法365条1甲)。

これらの規定に違反して会社に損害を与えれば、この損害を取締役は賠償しなければなりません(会社法423条)。

もちろん、取締役の会社に対する損害賠償は競業制限違反や自己取引制限違反によって会社に損害が生じた時だけでなく、およそ、その任務を怠って会社に損害を与えたと言えるときは損害賠償の責任を負います(会社法423条)。

自己取引の場合は承認を受けてなされていても、会社に損害が発生すれば責任が生ずる可能性があります(会社法423条3項)。会社法の規定は複雑な規定の仕方になっていますので、具体的必要が発生した時は事前に弁護士に相談する必要があるでしょう。


契約の解除・解約
[2010.04.16 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日は契約の解除・解約についてです。。

解除と解約は同じ意味で使われることと違う意味で使われることがあります。そこで、具体的にはどのような意味で使われているかは、議論の文脈全体との関係を見ながら判断しなければなりません。ここでは、解除は契約に債務不履行があった場合に債権者が契約をなかったことにする場合、解約は債務不履行を前提とせずに終了させる行為と言う意味として考えます。

まず、解除について。契約は守られなければなりません。例えば、AがBに期限を定めてテレビの購入を頼み代金を渡したが、Bがいつまでも買いに行かないという場合、Bには債務不履行があることになります。この場合、Aは一応催告をして、なおBがテレビを買ってきてくれなければ、テレビ購入の依頼を解除できます。そして、預けた代金を返せということができます。これを原状回復請求といいます。Bが早く買ってくれないのでテレビが値上がりしてしまって高いテレビを買わざるを得なかったという場合には、余計にはらった代金分が債務不履行と相当因果関係にある場合には損害賠償として請求ができる可能性があります。

仮に、テレビを買ってきてくれたら手間賃を支払うという約束になっていたとしても、当然、Bには請求権はありません。

ところで、契約が賃貸借とか、継続的な商品供給契約と言った場合、契約期間が定められていることが多いでしょう。その場合は、双方、その期間内は原則として約束通り契約内容を履行しなければなりません。途中で契約を止めたくなったという場合、解約条項(違約金の定めなどがある。)があればその定めにしたがって契約を終了させます。このように、債務不履行を前提としないで契約関係を終了させる場合を解除と区別して解約と言うことがあり、ここでもその使い方をしています。

解約の場合は、契約の種類や契約の解約条項によって終了時期が決まってきます。契約に解約条項があって、そこに、解約の意思表示がなされた後の終了時期が定めれていれば原則としてそれに従います。

 

但し、法律の規定が優先することもあります。労働契約においては一定の場合、労働基準法の定めが優先します。賃貸借においては借地借家法の定めが優先します。委任では、いつでも契約当事者の双方から解約できるとされています(民法651条1項)が、突然の解約で相手方に損害を与えればその損害を賠償しなければならないとされています(同条2項)

 

契約の種類によって解約による終了の期間とかの効果は様々ですので、具体的なケースでの効果の判断は弁護士に相談することが懸命でしょう。

 

医師法の定める医者の業務・義務
[2010.04.11 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日は医師法の定める医者の業務・義務つい見てみます。

医師でなければ医業をすることはできません(医師法17条)。医師でなければ「医師」やこれと紛らわしい名称を使ってはならないとされています(同18条)。医業は医師(医者資格者)が独占することになっています、国民の生命や健康に直接かかわる公益性の強い責任の重い業務であるので、資格者にしか業務を認めないのです。

その代わり、医師法では医師の業務に付き様々な規制を規定しています。医師には「診察義務」(応招義務)があります(同19条1項)。患者から診察治療を求められたときは正当な事由がなければ拒否できないとされています。少しくらい疲れていてもこれを理由に診療を拒否できません。診察などを現に行った医師は正当な事由がなければ診断書の交付を求められてこれを拒否することはできません(同19条2項)。

さらに、自ら診断しないで治療をしたり処方箋を交付したりしてはならない(同20条)とされています。そして、医師が患者に対し治療上薬剤を投与する必要があると認めるときは患者や現に看護に当たる人に処方箋を交付しなければならないとされています(同22条)。但し、例外はあり、特別な場合には交付しなくてもよいとされています。

その他、異常死体等の届出義務(同21条)、療養方法の指導義務(同23条)、診療録(カルテ)の記録義務(同24条1項)が定められ、診療録の保存期間は5年とされています(同24条2項)。そして、無診断治療等や診療録記載義務等違反には罰則があり、50万円以下の罰金です(同33条の2)。

医師法以外からも医師の責任はでてきます。診療に過失があって患者が死亡したり重篤な結果になったりすると業務上過失致死傷罪に問われます(5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金)(刑法211条1項)。民事的には医療過誤として損害賠償の責任(民法709条)を問われます。

医師の責任はこのように重大であり、医者には深い自覚が要求されると共に、医療を受ける側の国民には、医師が十全にその責任を果たせるような人的・物的・経済的環境を用意することも求められます。

 

死亡退職金は遺産分割の対象財産か
[2010.04.10 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日は死亡退職金は遺産分割の対象財産かどうかについて考えてみます。

生前に支給された退職金や生前に発生していたが本人が支給を受ける前に死亡した場合に、これらの退職金が相続財産であること、すなわと遺産分割の対象財産であることは問題がありません。

しかし、本人が死亡して遺族等の受給権者に支給される死亡退職金が相続財産に含まれるかどうかは問題です。公務員や私企業の従業員の場合、受給権者が支給規定で定められていて、これらが民法の相続の規定と違っていた場合、死亡退職金は相続財産性を有するのでしょうか。判例・多数説は受給権者の固有財産であるとして相続財産性を否定しています。

支給に関する規定がないけれど、使用者が任意に死亡退職金を一定の者に支給することに決めた時はどうか。民法の法定相続とは別の決め方をした時には、やはり、そこで決められた受給権者の固有の権利となる、と解される。

では、遺産分割協議において、これらは特別受益として取り扱うべきだろうか。判例は別れ、多数説は肯定説とされている(判例タイムズ1100、p337)。

しかし、受給権者の固有財産性を肯定するのであれば、相続分の決定に当たって持ち戻しを認めるのは、当該死亡退職金の支給趣旨が死亡した本人への功労報償性が強いと言えるのでなければ、説明が難しいように思われる。

   

遺留分減殺請求権と時効
[2010.04.10 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは遺留分減殺請求権と時効についてです。

Aが死亡し、B、C、Dの3人の子供が法定相続人であったとします。Aは亡くなる直前に遺言を書き、遺産の全部を末の子供であるDに相続させるとなっていました。Aは亡くなる時はDと同居していたのでした。

これを知ったBは疑問でした。Aは亡くなる頃はかなり認知症気味になっていたので、傍にいたDが訳の分からなくなったAに無理矢理書かせたものだろうと考え、遺言は無効だと主張しました。しかし、Dも遺言の有効を主張して譲らないのでBは裁判を起こしました。裁判は長くかかり高等裁判所まで争いましたが、Bの敗訴、つまり遺言は有効であるという判決が確定しました。

少しでも遺産を手に入れたいBは、仕方がないので、Dに遺留分減殺の請求をすることにしました。請求できるでしょうか。

残念ながら原則的にはできません。民法1040条に、(遺留分)「減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。」と規定されています。時効です。さらに「相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする。」とされていて、これは除斥期間だとされています。

しかし、本件の場合は遺言の無効を裁判で主張していたのであるからBに酷ではないか。このようなケースで「遺留分権利者が減殺すべき贈与の無効を主張していても、被相続人の財産のほとんど全部が贈与されたということを認識していたときは、その無効を信じていたため減殺請求権を行使しなかったことにもっともと認められる特段の事情のない限り右贈与が減殺できることを知っていたと推認するのが相当である。」との趣旨を述べた判例があります(最判・S57.11.12)。

遺言無効の裁判を出すのと平行して、相続開始と遺留分侵害を知った時から1年以内に、「仮に遺言が有効なら、遺留分減殺請求権を行使する。」との意思表示をしておく必要があることになります。


破産と免責不許可事由
[2010.04.9 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは破産と免責不許可事由ついてです。

個人の自己破産の場合には、免責を得なければ破産手続開始の申立をした意味はない。債務を免責してもらい復権を得て様々な資格制限から自由になって、初めて債務者の再生・再起が可能になるからである。

破産法では個人債務者の経済的再生を期して原則的に免責が認められることになっている。免責が認められないのは免責不許可事由に当たる事実がある場合である。破産法252条1項に列挙されている。

11の免責不許可事由が定められている。@債権者を害する目的で財産の隠匿や損壊等の不当に破産財団価値を減少させる行為、A不当な債務負担行為、B特定の債権者だけに義務もないのに特別な利益を与える等の行為、C過大な装飾品購入などの浪費、賭博などの行為、D破産手続開始申立があった日の一年前から破産手続開始決定があった日までの間に破産原因があることを知りながら詐術を用いて信用取引により財産を取得する行為。

さらにE帳簿隠滅等の行為、F虚偽の債権者名簿提出行為、G調査協力義務違反行為、H管財人の業務妨害行為、I破産者の説明義務違反や重要財産開示義務違反などの破産手続き上の義務違反行為、J過去7年以内の倒産で免責を得ていたなど、が免責不許可事由である。

これらの事由があると免責をしてもらえない。

しかし、裁量免責と言って、以上の事由に当たる事実があっても、一切の事情を考慮して、裁判所は免責を与えることができる(破産法252条2項)。自己破産の申立に当たっては、免責不許可事由に当たる事実があっても、免責を得ることを直ちに諦める必要はないわけである。しかし、もちろん、安易な行動によって多重債務者化することは避けねばならない。


離婚に伴う財産分与基準時
[2010.04.7 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは離婚に伴う財産分与の基準時についてです。

夫婦が離婚する時には、夫婦が婚姻中に二人で働いて形成した財産については清算することになります。仮に一方名義になっている場合には、一方の者は財産分与請求ができます(民法768条)。話し合いができなかったっり協議が整わないときは、離婚裁判や審判で判断してもらわなければなりません。この場合、財産分与の財産の範囲や評価は、何時の時点を基準にするのでしょうか。

裁判であれば離婚判決時(口頭弁論終結時)や別居時が考えられます。離婚後の財産分与請求であれば離婚成立時や財産分与審判時が考えられます。

離婚に先立って別居しているケースは多いので、その時点では、生活や財産形成が共同関係にないので、別居時が基準になると考えられます。しかし、別居したからと言って、直ちに、財産形成や生活関係が協力関係が完全になくなるとは限りません。未成年子を一方が養育しているなどという時は考慮する必要があるとの説も見られます。

別居時と判決時で一部の財産の価格が大きく変動した時も、果たして、別居時の評価で分与額を定めていいかどうか疑問があります。

結局、財産分与の基準時については、様々な要素を考慮しながら、ケース・バイ・ケースで妥当な解決をする必要もありそうです。


交通事故・お墓の破損
[2010.04.7 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは交通事故とお墓の破損についてです。

珍しいケースがありました。まだ、解決していないのでどのような解決がなされるのか不明です。私が調べた限りでは先例がありません。

墓地の中で自動車を運転していたところ、誤ってお墓に接触してしまいました。墓石が倒れお墓を構成している墓石数個に傷がついたのです。一つ一つは小さな傷で通りすがりに見たくらいでは見落とすような傷です。しかし、近づいてよく見ると傷がついています。

このお墓の修復・修理はどのような方法で行うのでしょうか。お墓の破損部分に似た色合いの石粉で埋める、破損した部分の墓石を削って大きさを整える(墓石全体が小さくなる)、損傷した墓石は全部取り替えて作り直す、傷ついた石も傷つかない石も全部取り替えて作り直す、等々・・。様々な方法が考えられます。

一つ一つの傷は小さいので、この傷が分からないようにするだけであれば、傷を埋めるような方法でできれば一番費用は少なくて済みます。交通事故による物損価額は、その費用相当分となり、加害者が賠償すればいい損害はその費用ということになります。

しかし、お墓の宗教性を考えると、一部でも不揃いな墓は受け入れられないという宗教感情から全部を取り替えなければならず、全部作り直す費用が損害だという主張もありうるわけです。被害者側の感情としてはそうかも知れません。しかし、一つ一つは小さな傷なんだから全部作り直せというのは、加害者に酷ではないかという疑問もありますが、どうでしょうか。

解決していないので、問題提起だけに留めておきます。


意思解釈
[2010.03.29 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは意思解釈についてです。

一般の人が契約を結ぶと、どのような契約内容なのか契約書から直ちにわからない様な場合があります。法律が私人の一定の行為に法律効果を認める行為を法律行為と言ってますが、その中核は意思表示です。この意思表示の内容を確定する行為が意思表示の解釈です。意思解釈とも言われています。

意思解釈は、意思表示をした人がどのような法律効果を望んだかを法律的に確定する行為ですが、その人の心の内を正確に確定することはできませんし、外部から見えない心の内の真意にしか法律効果を認めないとなると、相手方はたまったものではありません。例えば、他人から見て「買うと言ったと考えてよい外形的行為はあった」が、表意者としては「買う気はなかった」という場合、売買契約は成立しないというのでは、取引の安全は害されます。

どのような言い方をすれば、「買う。」と言ったと判断してよいか。これが、法律行為の解釈、すなわち、意思表示、意思解釈の問題です。

ちょっと古い教科書から引用します。「意図といっても、単に内心に存するだけでは足らず、意思表示者のそれについていえば、意思表示受領者が当該の具体的事情のもとで当該意思表示から通常期待すると認められるところが、当該意思表示の意味として承認されなければならない。」(幾代通・現代法律学全集・民法総則・青林書院新社、227頁)とされています。

私法の分野では、私的自治の原則が認められ、個人の意思に法律効果を認めるのですが、それも法的な客観性が要求されます。相手方に表示されたと認められないような意思に従った法律効果が認められることは原則としてないのです。意思表示の仕方には十分注意する必要があります。

個別労働契約と就業規則
[2010.03.28 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日は、個別労働契約で決めた労働条件と、就業規則の労働条件が違う場合の関係についての話です。

会社と労働者が労働契約を締結して雇用関係に入るときに、個別労働契約で明確に決めなかった労働条件がある場合には、就業規則に定められた労働条件が合理的でかつ労働者に周知させていた場合には、就業規則の定めが労働条件となります(労働契約法7条)。

しかし、個別の労働契約と就業規則の定める労働条件が違っていた場合はどうなるでしょうか。労働契約法7条の但し書きは「労働契約において、労働者及び使用者が就業規則と異なる労働条件を合意していた部分については12条に該当する場合を除き、この限りでない。」としています。つまり、個別労働契約が優先します。

労働契約法12条に該当するときというのは、個別労働契約で定めた労働条件が就業規則の定めに達していないときです。すなわち、個別労働契約で就業規則の定めより労働者に不利な定めをしても無効になります。

就業規則は、労働契約の段階で周知されている就業規則でなければなりません。従って、個別労働契約で合意されていない労働条件が、就業規則に定められていても労働契約が成立した後に周知措置がとられたときは、当然には、労働契約の内容をなしません。このような場合は、あらためて労使間で合意される必要があるでしょう。

合意されていない労働条件に関する就業規則の定めが後日周知されたときには、その労働条件が合理的で労働者が黙示的に了解したと認められるときは労働条件の内容をなすとみなされる場合はあるかも知れません。ただ、これは就業規則で労働条件を変更する場合とは違います。労働条件の変更のときは労働契約法8,9、10条によります。

就業規則は労働者がいつでも見られる、かつ、活用できるようにしておくことが使用者側に求められます。


一人取締役の死亡と相続放棄
[2010.03.22 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日は個別労働契約と就業規則の関係の話です。

小さな会社で、取締役は一人という株式会社。しかも、金融機関に結構な額の債務があり債務超過。事務所は賃借物件。取締役は会社債務について連帯保証をしている。このような状態で、その取締役が死亡した。相続人は会社の債務を負担したくないし、会社を継ぐ意志もないから、相続放棄をしたい。ところが、大家から、社長が死んで会社をやる人がいないのだから、事務所を早急に明け渡して欲しいと言われている。

このような場合、相続人は、大家のために会社の事務所を整理して明け渡していいものだろうか。

相続人が被相続人の負債を被りたくなければ、相続放棄をすることが認められている(民法915条)。しかし、民法921条には「法定単純承認」と言って、相続人が相続財産の全部又は一部を処分した時は、相続の単純承認をしたものとみなすという規定がある。うっかり、会社の事務所を明け渡したり会社の廃業手続きをしたりしたら、相続を単純承認したことにならないかという疑問である。

個人会社だから当然に株式も全株死亡した取締役の所有であるとしよう。この場合、相続人が相続するのは、取締役としての地位ではない。株式が相続の対象である。すなわち、株主としての地位が相続されるわけだ。では、会社の事務所を明け渡す権限は誰にあるのかと言えば、会社を代表してた取締役である。株主ではない。相続人は手を出せないのか。

ところで、会社と取締役の関係は委任の関係である。そして、委任は受任者が死亡すれば、委任関係は当然に終了するとされている(民法653条1号)。その上、委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者の相続人は次の義務者が処理することができるようになるに至るまで、必要な処分をしなければならない(民法「654条)とされているのだ。

事務所をそのままにしておけば、大家には回収不能な賃料が嵩んで迷惑がかかることになる。これは、急迫な事情と言っていいのではないだろうか。すると、相続人は、早く、事務所を明け渡してやる必要もあるだろう。これを、株主権の処分とみなされて単純承認とされたのでは、相続人としてはたまらない。

取締役の行為は株主の行為とは言えないし、一人会社の事務所返還を、株主としての、株主の利益の処分と見るのは無理があると思う。

相続人が会社の事務所を整理して家主に返還してやっても、それが、取締役の連帯債務を単純承認したとみなされるとすることは無理があると思われる。

優良な会社を清算して会社の残余財産の分配を受けたなどという特殊な場合でなければ、会社の取締役の相続人が株主の地位の相続人でもあったということで、ここから、単純承認とみなされることはないと解すべきであろう。


有席配偶者からの離婚請求
[2010.03.10 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは有席配偶者からの離婚請求についてです。

裁判で離婚する場合、離婚原因が決められている。民法770条1項である。配偶者の不貞、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、強度の精神病、その他婚姻を継続しがたい重大な事由である。離婚したいと思う一方配偶者は、このような事由がないと離婚請求はできない。

ところで、離婚原因の内、「配偶者の不貞」というのは、もちろん、妻が離婚を求めるなら「夫の不倫」、夫が離婚を求めるなら、「妻の不倫」があることが離婚請求の根拠である。離婚を求める自分が不貞(不倫)を働いて夫婦関係が破綻したのに、夫婦関係が破綻していると言って離婚請求はできない。つまり、有責配偶者からの離婚請求はできないとされている。

夫婦関係が完全に破綻している場合、「婚姻を継続しがたい重大な事由がある。」として、裁判で離婚を請求する場合があるが、原則として有席配偶者からの離婚請求は認められない。このようなことは身勝手だというわけである。

しかし、夫婦関係の破綻の原因が一方の配偶者にあったとしても、長期間に渡って破綻状態が継続して、夫婦として実態がなくなっているのに、形だけの夫婦関係を維持することも幸福とは言えない。昔は、有席配偶者からの離婚請求はおよそ認められなかったが、昭和62年になって最高裁は、夫の不貞により30年以上別居状態にあった夫婦につき、夫からの離婚請求を認めた判決を出した。

しかし、時間さえ経てば無条件で認めるというものではない。長期間別居の外、未成年の子がないことや、別居中の生活費の負担や、その他の事項(相手方を過酷に陥らせない)を考量して離婚を拒否しないという考えを示したのである。その後、7〜8年くらいの別居でも離婚を認めた判例も出ている。

一生添い遂げる夫婦もあれば、離婚する夫婦もある。どれが望ましいとも言えない。様々な選択肢が世の中に用意されている方がいいだろう。その意味では、不貞をはたらいた配偶者からの離婚請求も条件次第で認めるという方向はより拡大してゆくように思う。


無職者の休業損害・逸失利益
[2010.03.4 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは無職者の休業損害・逸失利益についてです。

現在、無職だという者が、交通事故や、その他、他人の故意・過失行為による事故で負傷した場合、加害者に休業損害や逸失利益の賠償を請求できるだろうか。無職者には収入がないわけだから休業損害や逸失利益もないのではないかという疑問がある。

しかし、既に就職先が内定していたとか、たまたま、その時期には失職していたが、就職先を捜していたという場合や、休業期間が長期になったり、後遺障害が残った全期間のことを考えると、今後も全く収入がないとは言えず、このような場合にも休業損害や逸失利益を全く認めないというのは酷であり不公平である。

全く短期間の治療期間で治癒したという場合は、その期間の休業損害というのは認めがたいが、既に就職先が内定していたが負傷のために就業が遅れたとか具体的なケースの判断によって休業損害が認められることも多い。

ただ、損害を計算する基礎収入額を何に求めるかは難しい問題である。先の内定の例であれば、内定していた賃金を基礎とすればいいであろう。しかし、具体的な就職先が決まっていないというケースでは、その人の年齢や、資格や学歴、職歴等を勘案して平均賃金を参考にしたり、無職となる直前に得ていた賃金を参考にしたりして計算基礎とした例があるようだ。

家庭の主婦であれば女性の平均賃金で計算する例が確立していると言える。請求する側となった場合には、無職者も休業損害や逸失利益は認められることがあるので、弁護士に相談して工夫をしてみる必要がある。


賃金未払・時効、付加金
[2010.03.2 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは賃金未払・時効、付加金についてです。

労働債権(賃金)の時効は2年である。ただし、労働債権の内、退職金の時効は5年である(労働基準法115条)。

従って、この期間内に裁判を起こさないと、賃金請求権を失う可能性がある。ところで、一定の範囲内の賃金については、使用者が未払いにして裁判を起こされ、労働者(従業員)が請求すれば、「付加金」の支払いを命ぜられることがある。使用者に経済的制裁を課して労働者への賃金支払いを確保し、労働者を保護するためである。

裁判所は、未払賃金請求の裁判が起こされると、その未払賃金の性格が、「解雇予告手当」「休業手当」「時間外(残業)手当」「年次有給休暇手当」である場合、労働者の請求により、未払分の外に、「同額の付加金」の支払いを命ずることができる、とされている(労働基準法114条)。

この付加金の支払い義務は判決の確定によって初めて発生するというのが判例である。

また、付加金は裁判所の裁量により減額できるものであり、大幅な減額をした判例もある。


交通事故の損害(通院交通費・代替労務費)
[2010.02.28 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは交通事故の損害(通院交通費・代替労務費についてです。

交通事故によって傷害を負い、病院への通院を余儀なくされた。様々な損害が発生するが、法律的には相当因果関係の範囲内にあるとされる損害だけが請求できる。交通事故がなければこの損害は発生しなかったといえる損害の全てを賠償してもらえるわけではない。

それでは、被害者は「当てられ損ではないか。」と言われれば、そのようでもあるが、自然的因果関係は無限であり得るので、どこまでも損害を認めては、紛争がいつまでも解決しない。法律的には一定の範囲の損害に留めて賠償の対象とする。

交通事故で負傷して、これの治療のために、病院やクリニックへ通院する交通費は、原則として、その実費が賠償の対象となる。しかし、怪我の程度や病院の位置関係などからしてバスで通院すれば済むのに、不必要にタクシーが利用されているという場合には、バス代の範囲でしか認められないこともある。

事故の直後はタクシー代が認められても傷害が回復してきてバス通院に切り替えられる場合は、途中からはバス代だけという場合もあろう。

交通事故で負傷して労働ができなくなり、その間、他人を雇って事業を維持したと言う場合の代替労務費はどうだろう。これは、休業損害の算出方法に関する問題である。事業を完全に休んでしまえば、その期間に休まなければ得られた利益が休業損害である。しかし、その算定方法は結構困難である。サラリーマンであれば過去3ヶ月分の給料の1ヶ月平均を基準として計算したりする。

個人事業者であれば、普通、過去の申告所得を基準にして計算したりする。人を雇ってやりくりした場合はどうか。臨時の労賃だから高めの支出になっていることがあり、申告書を基準にした方が払う方からは安く付くことがある。こ場合も代替労務費を認めた判例もある。しかし、常に、どんな代替労務費も認められるとは限らない。

通院交通費にしろ、代替労務費にしろ、被害者側と加害者側(多くは、保険会社が出てきて争う)に話し合いが付かなければ、裁判所に判断してもらうか、交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故斡旋制度を利用するなりして、解決することになる。


地代減額請求
[2010.02.20 記]

仙台でも弁護士が地代減額請求の相談を受けるようになった。

戦後、物価はほとんど右肩あがりできたから、長い間、地代の増額請求がほとんどであったと思われるが、リーマンショック以来の大不況で、バブル崩壊期を乗り越えてきた借地人達も、いよいよ持ち堪えられない状況が発生している。

地代の減額請求は、借地借家法の第11条に規定されている。条文上は、増減額請求が一緒に規定されているのだが、ここでは、減額請求の場合だけ紹介しておこう。

これによれば、地代が土地に対する租税その他の公課の減額や、土地の価格の低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相応となったときは、借地人(地上権者を含む)は将来に向かって地代を減額することを請求できるとされている。ただし、一定期間減額しない定めがあるときはできない。

しかし、簡単に地主は地代の減額請求には応じないし、請求された減額ではなく、小幅な減額になら応ずるという場合もあろう。当事者の間で協議が整わない場合には、地主は減額が相当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代を請求しておき、正当な減額額が裁判で確定した時に超過額に年一割の割合による利息を付して受け取った超過額を返還しなければならないとされている。

このように、最終的には裁判で決めてもらわなければならないことになっている。

そして、地代の増減額請求の場合、原則として裁判をいきなり起こすことはできず、まず、簡易裁判所に調停を起こさなければならない(民事調停法24条の2)。いわゆる、調停前置主義がとられている。


欠陥住宅と業者の責任・時効
[2010.02.6 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは欠陥住宅と業者の責任・時効についてです。

せっかく家を建てたのに欠陥(瑕疵ある)住宅で、住み心地が悪かったり、ひどいときに住んでられないなんて事もあるかも知れない。こんな時、建築を請け負った建築業者に責はどうなるだろうか。民法に請負の規定がある。

建物の注文者は、建築請負業者に欠陥(瑕疵)の修補を請求できるし、損害賠償も請求できる(民法634条)。但し、瑕疵が重要でない場合にその修補に過分の費用を要するときは修補の請求はできないとされる(同条1項)。この権利は、建物の引き渡しがなされた後5年以内になされなければならい(民法638条)。ただし、建物が石造り、コンクリート造等の構造の場合は10年である。

では、建物が欠陥(瑕疵)のために契約をした目的を達することができない場合は契約を解除して土地の原状回復を求めたり請負代金の返還を求めることができるだろうか。建物や土地の工作物については解除はできないとされている(民法365条但書)。請負人に酷だからというのがその理由である。しかし、解除ができないとすると欠陥住宅を建てられて家を建てた目的が達せられない注文者には、もっと、酷ではないだろうか。

平成14年9月24日の最高裁判決は、請負人が建築した建物に重大な瑕疵があって建て替える以外ない場合に請負人に建て替え費用相当額の賠償を命じても民法635条の趣旨に反しないと判示した。

この判決は解除ができることを認めたものではないが、実質的に解除と同じ効果を認めたに等しい。

ところで、欠陥のあることは完全な仕事をしなかったのだから債務不履行だとして責任追求するこてはできるだろうか。建物が一応完成している以上、債務不履行の問題ではなく請負工事の瑕疵担保(無過失責任)の問題であるとするのが多数説とされている。しかし、債務不履行責任を認めた一部の判例もある。この場合は、時効は10年となる。

では、不法行為の責任は追及できるか。瑕疵が故意・過失に基づく場合は、請負人に不法行為も認められるであろう。不法行為を認めた判例も散見される。この場合は、瑕疵を知ったときから3年の時効、工事が完成した時から20年の除斥期間にかかることになる。

いずれにしろ、建物の瑕疵を問題にする場合、専門性の高い事項を扱うこととなるので、建築士の協力なしには困難であろう。弁護士を頼む場合も建築士との連携がとれることを確認する必要がある。


過払金請求か損害賠償請求か
[2010.01.28 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは過払金請求か損害賠償籍優かについてです。

利息制限法の制限利息を越えた約定利息で元利の分割弁済をし続けると、ある時点から、利息制限法での再計算で、過払い金が発生し、これは、不当利得返還請求権に基づいて取り戻せる。しかし、不当利得返還請求権の時効は10年である。従って、取引が終了してから10年以上を経過していると過払い金も取り戻せない。

しかし、第一取引と第二取引があり、第一取引と第二取引を一連の取引と見ることができれば、第二取引が始まった時に第一取引の過払金を第二取引に元本充当して計算し、結果的には単独では時効に掛かっている過払金も取り戻せることになる。

だが、第一取引と第二取引が時期的に離れすぎていて一連の取引と見ることができないときは、この考え方では過払金の取り戻しはできない。そこで、過払金を黙って受け取り続けたことが不法行為にあたらないかという考え方がある。不法行為による損害賠償請求権の時効は3年であるが、返還請求権があることを知ったときから3年以内で、取引が終了してから20年(除斥期間)内であれば、請求が可能だからである。

判例時報2058号に、平成21年9月4日の最高裁第2小法廷の判決が紹介されている。

それによれば、「・・貸金業者が、借主に対し支払を請求し、借主から弁済を受ける行為それ自体は、当該貸金請求権が存在しないことが事後的に判断されたことや、長期間にわたり制限超過部分を含む弁済を受けたことにより結果的に過払金が多額になったことのみをもって直ちに不法行為を構成するということはできず、これが不法行為を構成するのは、上記請求ないし受領が暴行、脅迫等を伴うものであったり、貸金業者が当該貸金債権が事実的、法律的根拠を欠く者であることを知りながら、又は通常の貸金業者であれば容易に知り得たのに、あえてその請求をしたりなど、その行為の態様が社会的通念に照らして著しく相当性を欠く場合に限られるものと解される。この理は、民法704条所定の悪意の受益者と推定される場合においても異なるところはない。」とされている。

かなり、悪質な場合でないと、不法行為だとして、過払金を取り戻すことは難しいようだ。


消費者自己破産
[2010.01.24 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは消費者自己破産についてです。

サラ金やクレジット会社からの借り入れが多くなり、いわゆる多重債務者状態となって、生活も立ちゆかず、整理をしなければならないことがある。

方法は様々なものが考えられるが、30年くらい前は、任意整理によることが多かった。「サラ金地獄」という言葉が生まれたころで、このころは、破産手続は、個人債務者のためには、あまり、有効に利用されていなかった。近親の者が本人のために負債の何割かの現金を用立てて、弁護士は、利息制限法での再計算の上、債務の縮小交渉をしたり、長期分割払いの交渉をしたりした。

しかし、弁護士も裁判所もサラ金問題の対応に工夫を凝らし、破産手続きを使って多重債務者を救済するようになった。免責制度が有効に使われた。数年前には破産手続きの利用は鰻登りとなり、仙台地裁本庁でも年間3000件を越える申立となった時期もある。しかし、その後、過払金請求で解決するようになった。最高裁の判決が大きく寄与したことは言うまでもない。破産件数は減っている。

とは言え、今後も破産手続きは多重債務者の救済手段としての地位を失うことはない。既に過払金請求の事件は減少してきており、今後は、いわゆるグレーゾーンの解消などによって、多重債務者化した債務者は再び破産手続きで救う以外なくなるからである。

債務者が自ら破産手続開始を申し立てて手続きを開始することを自己破産と言う。破産手続きは、端的に言えば、負債が大きくなって一時に支払わなければならない債務を支払うことが不可能になった時に、現在の財産を全て破産手続きの中で債権者に平等に配当して清算し、その代わりに残りの債務を免除してもらう(免責)してもらうことを目的とする手続きである。しかし、浪費や財産隠匿、詐欺による債務負担など、不行跡のある債務者は免責してもらえない。

ところで、配当原資となる財産もない場合は、「破産の同時廃止」といって、破産宣告だけで、手続きを終わりにしてしまうこともある。この時も免責制度は利用できる。

破産の場合は、原則的には免責をしてもらえるのだが、破産に至った事情を裁判所が債務者から直接聴取をして、免責不許可事由の存否を確認することもある。「審尋」という手続きである。裁判所の審尋の運用は時期時期によって様々であった。弁護士を申立代理人として依頼した時は、債務者と一緒に裁判所に出頭して立ち会ってくれることが多い。私はそうしている。

収入の状態によっては、法テラスが運用する法律扶助によって、費用の立て替えや援助を得て破産申立を行う方法もある。


解雇権の濫用
[2010.01.02 記]

こちらは仙台の弁護士馬場亨の法律事務所です。今日のテーマは解雇権の濫用についてです。

昨年暮れから年始めに掛けて今年も「派遣村」が開かれた。昨年のこの時期は麻生政権であったが、この間に、政権交代が行われ鳩山首相になっている。しかし、経済は落ち込んだままだ。労働市場で使用者も労働者も生死をかけている。

労働者は会社が苦しくて解雇されれば、たちまち、路上に投げ出される。使用者は生産・流通等の経済に責任を持つものとして労働者の生活にも責任を持たなければならない。会社の経営のしわよせを安易に労働者に押しつけることは慎まなければならない。

しかし、その責任の十分な自覚がなされているとは限らない。これらのチェックをするのが法律の役割である。労働基準法20条1項では、使用者が労働者を解雇するには少なくとも30日前に予告しなければならいないとし、そうでないときには、30日分以上の平均賃金を支払わなければならないとしている。

では、解雇に法定の予告期間を置いたり予告手当を支払いさせすれば、労働者をいつでも解雇できるかというと、そうではない。さらに規制がある。

労働契約法16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」としている。

さらに、労働契約法17条1項では、「使用者は、期間の定めがある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」と定めている。

使用者も労働者も、日頃から、法律を意識して行動することが必要である。



このページの先頭へ

法律メモメニュー


馬場亨法律事務所

仙台市青葉区一番町2丁目
10-26-1103

TEL.022-266-3976
FAX.022-266-3916


地図


法律相談ご希望の方は来所日時を電話でご予約下さい。相談時間は平日の午前10時から午後6時までとなります。




馬場亨法律事務所
仙台市青葉区一番町2-10-26-1103 / TEL.022-266-3976
Copyright© 2007-2010 Toru Baba Law Office. All Rights Reserved.
Validated XHTML 1.0 Transitional + Validated CSS
counter