昨夜来、木枯らしが吹く。
戸外に吹きすさぶ風の音を聞くと、いつも、北海道を思い出す。
北海道の冬の風はもの狂おしく、身を縮めて家の中で何かを待ち続けていた幼かった頃の日高の寒村の夜。小さな兄弟で母にすがりつき、父の帰りを待ち続けた夜。
後日、今は亡き母がよく語っていた。幼子を抱えながら十勝へ働きに出ていた父の留守を守るのは、それは侘びしく孤独であったことを。
そんなある日、千島へ漁に出かけていた「みつせい丸」の「あに」が遭難して死んだ、という知らせ。やりきれない知らせであったらしい。(註 「みつせい丸のあに」・・我が家族が交際のあった漁師一家の長男息子であった。)
幌泉で過ごした日々。
記憶もない頃、父母に伴われて函館から移り住んだ。私の記憶は幌泉から始まる。小学校2年の11月、隣町の様似(さまに)へ転居した。様似から静内へ、静内から小樽へ、そして高校生の時に函館へ戻ったのだが、私の意識の中では「戻った」という感覚はない。
時に見た夢は「幌泉」へ帰る夢であった。
春の土筆、原っぱにつながれた牛、夏の南部家(地区の名称)へ続く坂道とアイスクリーム、秋の小学校の学芸会、胸のあたりまで積もった雪の冬、波寄せ返す燈台の岬。
なんて、遠いんだろう。
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